Azumino Yamabiko
保育園児と走る自転車の旅。今回は北アルプスを望む安曇野、その名も「あづみ野やまびこ自転車道」を小学6年のモトと3人で8月に走った。
行けるところまで行って、大糸線で戻って来ないとならないので、出発地点は松本駅の2つ先、島内駅。あいにくの曇り空で、アルプスの山々は雲に隠れている。旧国道に出て、奈良井川を目指す。道路狭くて歩道なく、交通量多く、年長さんのリヒトには少し厳しい道だが、短い距離なので、少しずつ進んだ。
奈良井川に架かる新橋の先、国道19号と川に挟まれて細い道が上流へ続いている。このあたりは特に自転車道というわけではないらしいが、国道から離れ、クルマがあまり走らないので助かる。川にはカモが泳いでいる。
途中、拾ヶ堰という用水を分けるための堰がある。じっかせぎ、と読むのだそうだ。あとでわかったことだけれど、安曇野やまびこ自転車道は、安曇野に奈良井川の水を供給するこの用水路沿いにずっと続いているのだ。拾ヶ堰はこの取水口から終点まで標高差たったの5メートルで、等高線に完全に沿って流れているのだそうだ。
国道19号が川に迫るあたりでは、細い道は路側の歩道になってしまい、先に行ったモトが邪魔なところで待っていて迷惑。意外と地元の人たちが自転車で行き来するのに使っているようで、ママチャリ何台もとすれ違った。もちろん土曜日なので、私たちのようなツーリストも多い。
平瀬橋は新旧2本あるが、とにかく梓川に架かる自転車専用橋(!)から自転車道に入ればいいやと思っていたので、新しい橋を渡って、すぐ右折。ゴミ処理場の廃熱を利用した温水プール「ラーラ松本」を目指して行く。橋は「ラーラ松本」を回り込んだところにある。並行して「アルプス大橋」という国道の車道橋もあるが、古い地図には載っていないので、「自転車橋」より後にできたものらしい。
自転車専用橋とは言え、特に特徴があるわけではない、細い橋だ。渡ったところに、場違いに巨大なシールドマシンの先頭部分が展示してあった。梓川の下に拾ヶ堰を交差させるため、10年ほど前に掘削した際のシールドマシン。交差部の逆サイホンが最初に完成したのは大正9年だという。ほとんど水平の水路と言い、川と交差する逆サイホンと言い、先人はとてつもないことを考えて実行したようだ。
迷路のようにアルプス大橋の国道の下をくぐり、その拾ヶ堰に沿って西へ走る。用水はほとんど満水だ。いまにも溢れそう。水路と道路が交差する箇所では、自転車道は道路の下をくぐるから、用水の水面よりも低いところを並んで走る。溢れたらどうするのだろうと不安になる。それよりもモトが怖いのは、道路橋から垂れ下がったクモの巣だ。
長野自動車道をくぐり、バイパスが北側に離れたあたりから、あたりはとたんにのどかな光景になり、山々の眺望が開けた。左手に豊科町の南部総合公園が見えて、ここで休憩。とにかく広いスポーツ公園で、子供たちも走り回っているが、付き合っている父母もスポーツウェア姿が多いのが印象的だった。トイレを探して公園を一周したからわかったことだけれど。
公園を後に県道を過ぎたところで、まだ青い実を落としている栗の木を発見。傍らの看板を見ると、目的地の道の駅まではまだまだだ。
国道をアンダーパスで越え(モトはクモの巣が怖くて先頭で行けず、リヒトは遅れてついてきた)、小さな木橋で拾ヶ堰を2回左右に渡ると、大糸線の線路が見えて来た。ちょうど2両編成の銀色の電車が走り去って行くところだった。
線路を過ぎてから、用水、農道、自転車道と並行するようになり、また雰囲気が変わる。「自転車道休憩所」と書かれた四阿が用水の対岸にあり、立ち寄るが、クモの巣だらけであわてて退散。遠く雲の切れ間に、常念岳の山頂だけがぽっかりと浮かんでいる。
火の見やぐらが立つ小さな集落で、用水の対岸に渡る。ここにも小さな公園があって、一休み。近所の子供たちが遊戯王カードをやっていた。モトは遠くからその会話に興味津々。水道で腕に水を浸すと、風がここちよく感じられる。
鎮守の森を過ぎ、道祖神にあいさつすると、なんだか山々が近くなってきたような気がしてきた。水辺の木々にはトンビ、カラス、スズメが大合唱。水面にはカモが泳いでいる。暑いのでうらやましい。
広域農道と交差する。その農道沿いに、目と鼻の先の距離で道の駅が見えているのだけれど、自転車道は律儀に用水沿いをたどっている。拾ヶ堰と一緒に急カーブした先が、堀金小学校の真新しい校舎。自転車道はその先で急に用水から離れてたんぼの中を左右に直角にぐねぐねと曲がる。リヒトが曲がり切れず、たんぼに突っ込むんじゃないかと不安で一杯だったが、無事?旧堀金村役場、いまのスポーツセンター、図書館、道の駅の一帯にたどりついた。
振り返ると夏の常念岳の輪郭がさっきよりはっきりと見えた。
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