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Climbers on the Edge

The Expedition Day

by Days posted at 2010-09-14 22:25 last modified 2010-11-22 23:40
Courtesy of Kazuya Hiraide

マナスル初登頂、植村直己のエベレスト登頂に連なる日本の山岳界はどのように広がって行くのか、そのフロントラインを明らかにしようという野心的なディスカッション、「ザ・エクスペディション・デー」(主催:日本山岳会・日本山岳協会・毎日新聞社)が9月11日、東京・代々木で行われた。
ステージに登壇した6人は、いわゆる大学山岳部出身の「アルピニスト」の姿とはかなり異なる「エッジな」クライマーたち。短い持ち時間の中でそれぞれの挑戦についてスピーチを行った後、柏澄子さんのコーディネートでディスカッション。

平出和也さん(31)と谷口けいさん(38)は、それぞれヒマラヤの山々に挑んだ結果、登山隊の一員として登るのではなく、2人のパートナー同士としてインド、パキスタン、チベットなどでユニークな登山を楽しむようになった。自身の登攀を映像に残すことを得意とする平出さん。2008年に日本人初のピオレドールを受賞するきっかけとなったカメット南東壁「サムライダイレクト」に挑んだ7日間がまず映像で紹介された。
清涼飲料水のCMに出てくるような絶壁に挑むのだが、「ファイトー!」「いっぱーつ!」というような気合いで登れるような山ではない。4日の予定が結果的に7日になったが、日が暮れて暗くなってからも冗談を言い合いながら着実に高さを稼ぎ、ほんのわずかなスペースに天場を築いて仮眠する彼らの登山の「楽しみ方」にはちょっとしたカルチャーショックを覚える。
「最初は楽しくてしょうがなくて、少しでもこの壁の中にいたいと思った」と平出さん。「よくきたね。やったね、すごいよ。本当にありがとう」。互いの健闘を称え合う登頂直後の谷口さんの言葉が印象的。
とはいえ、そのカメットの翌年に挑んだガウリシャンカールでは頂上の手前、150メートルで敗退した。「失敗から学ぶこと、山に教えられることは多い。おまえたちはここから登らせないぞという威圧感があった。それでも悔しくはない。山をまるごと楽しんでいるから」(平出さん)。
「未知の中に手探りで行くことによって感動もあるし、自分の可能性や限界がわかる。やべえ間違えちゃったかな、帰ろうかなとも思うことはあるけれど、それは山と自分の距離が遠いから。山の麓で何日か暮らすことで次第にその距離が縮まってくる」(谷口さん)。

ビッグマウンテン・スキーヤーとして知られる佐々木大輔さん(33)は、集大成とも言える "END OF THE LINE" を発表後、山岳ガイドとしての活動に軸足を移した。昨年は11月から5ヵ月間、南極観測隊にフィールドアシスタントとして参加。昭和基地から600キロ離れた奥地に滞在するセールロンダーネ地学調査隊の安全管理を担当した。「極限を目指すスキーには自分の経験が生かされているし、そこで培われた判断力は山岳ガイドでも生かされる。それを磨いて行きたい」。
佐々木さんはもともと中学2年のときに山岳ガイドを志し、宮下岳夫さんの紹介で三浦雄一郎スキースクールに通うようになったのが、日本屈指のスキーヤーになるきっかけだった。それゆえ、ただのプロスキーヤーではない。「2003年にデナリ。仲間と努力して登るということが気に入った。その次がパラムシル島。その後、グリーンランドのフィヨルドをシーカヤックにスキーを積んで、2週間旅をしたりした」。そんなユニークな経験が "END OF THE LINE"、そして山岳ガイドの活動につながっている。

佐藤佳幸さん(35)がのめりこんだのはアドベンチャーレース。世界最高峰のレイド・ゴロワーズというレースでは、ボード、MTB、インラインスケート、ラフティング、乗馬‥‥など数々の種目をこなさねばならず、しかも登山だけでも4000〜5000メートルまで登る。基本はチーム参加。ひとりでも脱落したらし失格なので、とにかく仲間と息を合わせるのが重要。
「わからない種目ばかりに取り組んで来たので、やっている人のところに泊まり込んだりしてトレーニング方法を習得してきた」と佐藤さん。「初めてアドベンチャーレースに挑戦したときには何もできなかった。できないから、未知のものにチャレンジできる理由があった。チャレンジするときに応援してくれる人たち、一緒にやってくれる仲間がいたからやれた」。
そんな佐藤さんだが、2007年からはアウトドアスポーツの魅力を伝える映像カメラマンに転身。トレイルランナーでもある「普通の主婦」間瀬ちがやさん(43)を被写体として追っている。
「アドベンチャーレースやトレイルランニングは自然の中で仲間とともに景色を楽しみながらできるのが魅力。映像はアプローチしやすい場所で撮られているので余裕がありそうだが、実際にはもっと極限状況のところが多い。そういうところを映像で紹介したい」と話す。
一方の間瀬さん。「買い物にいくついでに走る。山も好きだから山も走る」。控えめに話すが、2006年のトランスジャパンアルプスレースでは優勝をかっさらった恐るべき「主婦」だ。
そして「冬も走りたい」2人が熱中しているのは、まだ日本ではなじみのない「山岳スキー競技」。山スキーでおなじみのシールをつけたり外したり、標高差約1500メートルのコースを2時間程度で一周するレース。シールの着脱には工夫があり、着けるのは40〜60秒程度、はがすのはべりべりと一瞬。ヨーロッパではメジャーだが、7年目に佐藤さんたちが世界選手権に出たときには、彼らは雑誌で写真を見ただけでレース未体験だったとか。

驚くべきは高校2年生の中嶋徹さん(17)。ソウルフルなクライマーの中嶋岳志さんを父に持ち、瑞牆山、小川山、湯川、鳳来の数々の難グレードルートを完登した挙げ句、2009年夏には英国のピークディストリクト国立公園へ。岩壁を傷つけない、人工物を残さずに登る「トラッドクライミング」で成果を上げて注目され、今年もインターナショナル・クライマーズ・ミーティングに参加するため再び英国で難易度の高いクライミングに挑んだという。
支点がほとんどない岩壁に、するすると登って行く中嶋さんの映像。ロープはあるが「まったく意味がない。落ちたら一巻の終わりというのは精神的に厳しい」。見ていても心臓に悪い。
最初はトップロープで何度もトライして、それで落ちないと確信できてから挑むのだという。「行けると確信してから1時間後ぐらいにそのルートに挑む。緊張でおなかが痛くなったりすることもある。自分の中で葛藤もある。それが集中力の妨げになるので、できるだけそのルートを離れて、散歩したり食事したりしてルートのことをできるだけ考えずにして、戻って来て手早く準備して集中に持って行くようにしている」。こんなことを考えながら登るクライマーが本当に高校生なのだろうか。

「主婦」の間瀬さんがどんなトレーニングをしているのか。「ときには朝、家族を送り出してから富士山に登り、午後帰ってきて家事をしている」という間瀬さんの返答に、「自分の中ではトレーニングは一切していないが、山岳ガイドの仕事でバランスが磨かれている」と続ける佐々木さん。そこから谷口さんと中嶋さんが異口同音に「バランスは非常に重要」と揃えると、「体力的なバランスもあるけど、社会的なバランスも」と唯一会社員の平出さんが反応する。
「エッジなクライマーたちのディカッション」からはもっとピリピリしたやりとりを期待していたが、本当に最前線に立つ人たちというのはむしろ言葉に出さない共感を周りに伝える人たちなのかもしれない。

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