Drop Charges Against Karma Samdrup!
Students for a Free Tibetのキャンペーングループがカルマ・サンドゥップの無実を訴えるキャンペーンを始めた。オンライン署名サイトも開設されている。
42歳のカルマ・サンドゥップは、実業家、慈善事業家、環境保護活動家など様々な顔を持つ。チベット自治区チャムド(昌都)地区のゴンジョ(貢覚)県孜栄村出身で、兄のリンチェン・サンドゥップ、弟のジグメ・ナムギャルとともに「カルマ三兄弟」と呼ばれる。
カルマは正式な教育は受けておらず、中国語もあまり得意ではないが、商才に長けて特にチベット天珠(てんじゅ)の流通を握ることで成功を収め、「天珠王」とも呼ばれる人物だという。ウーセルが『南方週末』に書いた記事によれば、世界で最も多くのチベット文化財を収集しているコレクターだという。天珠の分野では西蔵天珠之路文化伝播公司の理事長であり、一方で青海省三江源生態環境保護協会(Webサイトは現在停止されている)の副会長でもある。
2008年設立の同協会の前身は青海省玉樹チベット自治州にあった「玉樹三江源生態環境保護協会」。アムドの長江、黄河、瀾滄江(メコン河)の源流地域の自然保護を目的として、4月に起きた青海地震の震源地、ジェクを本拠地に1999年に設立された民間NGOで、理事長のタシ・ドチェは2002年には中国環境新聞記者協会などが主催した第6回「地球賞」を、2006年にはCCTV(中国中央テレビ)の「年間公益賞」を受賞するなど、数々の栄誉に浴している。
その彼がなぜ逮捕され、裁判を受けようとしているのか。
そもそも弟のジグメ・ナムギャルが、2003年から地元孜栄村で始めた自然保護活動が周囲のやっかみの種になったようだ。彼のグループの活動は高く林業局や環境保護局からも評価され、2006年にはフォードの「環境保護大賞」を受賞するなど、全国的に注目を集めていた。
この孜栄村は隣村とのあいだで境界線を巡る対立が代々続いており、たびたび乱闘騒ぎが起きていたらしい(カムではよくあること、という)。共産党員である指導部が国家保護野生動物の密猟を行っており、告発しようとした村民が暴行を受けて重傷を負ったばかりか、冤罪で逮捕されたとか、県林業局の「休耕造林」プロジェクトで村民は農作物に対する十分な補償を得られなかったとか、ジグメ・ナムギャルの周囲でもトラブルが絶えず、カルマ・サンドゥップの成功もあって、カルマ三兄弟は次第に攻撃の標的になっていく。
2009年8月7日、村幹部の程越は自分の護衛隊を引き連れ、リンチェン・サンドゥップとジグメ・ナムギャルの自宅から彼らを連行したほか、家宅捜索を行い、70歳になる彼らの母親を殴りつけた。
その年の11月13日、チャムド地区労働教育委員会はジグメ・ナムギャルを国家安全危害罪で告発し、1年9ヵ月の労働教育を命じた。本人は漢字が読めず、その決定内容がわからないままだったという。告発によればジグメ・ナムギャルは「チャムド地区の生態環境に関する情報を極秘に収集し、資源と宗教に関する資料を作成し、非公認団体を結成して非合法出版物を出し、県、地区、自治区の決定に逆らってたびたび中央政府に上訴するなど、行政秩序を乱した。また、ダライ・ラマと亡命政府が指名したパンチェン・ラマの写真を所持していた」という。
カルマ・サンドゥップは弟のジグメ・ナムギャルのため、北京から弁護士を呼んだが、「同じ省内以外の弁護士は担当できない」という新しい規則で果たせなかった。ジグメ・ナムギャルは取り調べ中に障害が残るほどの虐待を受けたという。
そして今年1月3日夕方6時頃。成都でビジネスパートナーと会食をしようとしていたカルマ・サンドゥップは、新疆からの公安組織を名乗る10人ほどの男たちに囲まれ、連行された。8日には米国ハイアットグループの社長、トム・プリツカー一行がラサを訪れ、博物館を模した五つ星クラスのホテル建設についてカルマと話し合うことになっていたという。その矢先のことだった。
カルマの家族は彼の居場所を各所に問い合わせたが、わかったのは新疆の公安部が彼を拘束したということだけ。8日になって彼の妻、チェンガに新疆ウイグル自治区チャリクリク(若羌)県の刑警大隊から電話があり、彼らがカルマの身柄を確保していることがわかった。
ヒューマン・ライツ・ウォッチが6月10日に出したリポートによれば、成都から遠く離れたチャリクリクの刑警大隊がカルマ・サンドゥップを拘束した罪状は「考古文物盗掘罪」。公安によれば、焉耆(イエンチー)県の遺跡で1998年に起きた盗掘事件に、彼が関与していたのだという。この事件については当時、彼が政府発行の文物取引許可証を持っていたことで不起訴になったはずだった。
焉耆県人民法院での公判は当初6月1日に行われるはずだったが、直前になって延期が発表され、家族に公判期日の通知があったのは公判前日の6月22日。
AP通信によれば、浦志強弁護士は23日の公判で、カルマ・サンドゥップの無罪を主張し、カルマのチベット語での証言が中国語の調書にねじまげられて翻訳されていると訴えた。また検察の違法逮捕を訴え、6ヵ月の拘束中にカルマへの暴行があったのではないかと質問したが、検察は回答を拒否したという。
浦志強弁護士は閉廷後、自身のブログで、カルマ・サンドゥップの健康が相当蝕まれていることを明かした。1月の逮捕時に93キロあった体重が、いまや75キロしかないという。彼はカルマが暴力的な取り調べを受けたのではないか、として、この裁判が「違法な方法で収集された証拠は排除しなければならない」という中国の法律原則に反していると彼は書いている。「裁判所は公判を中断し、審理をやり直してほしい」と彼は裁判所への公開要請を結んでいる。
この事件はまだ進行形。どうもカリスマ実業家に対する嫌がらせの匂いがする。考古文物盗掘罪の法定最高刑は死刑だというから、生意気なチベット人を脅すには十分だと当局は考えているのかもしれない。幸いにして公判の模様は浦志強弁護士が逐一Twitterで世界中に公開している。
テンジン・デレク・リンポチェといい、カルマ・サンドゥプといい、チベット人から人望篤い著名人を狙い撃ちすることでチベット人社会の結びつきを弱めるための工作が行われているとしか私には思えないのだ。
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