Mera, Koura
ジャングルパークの温室に沿って続く尾根沿いの遊歩道はどこまでも上に、嫌になるぐらい続いていた。快晴一下で幽霊を恐れる訳じゃないが、棄てられた温室の中を覗くのには勇気がいる。棄てられたとは言え、管理はされていて、さっき岬でカメラのシャッターを押してくれたおじさんが、温室の入口で戸締まりをしていた。
ピークは駐車場。集合写真を取るための横長の踏み台、ベニヤ板が打ち付けられた売店が痛々しい。ジャングルパークが閉鎖されたいまも、駐車場の料金所にもおじさんがいて、石廊崎に行く観光客を案内している。
再び県道16号、下田石廊松崎線に出て、松崎方面へ向かう。県道沿いのガソリンスタンドも同時期に閉鎖されたと見え、いまはすすきの原の中。かなり登ってきたつもりなのに、まだ上る。歩き押しが多いので、速度がなかなか上がらない。上って下って、すすきの原。「長津呂歩道」の入口があり、小径があいあい岬を横断するように続いているが、車道をたどる。
岬を回る地点に駐車場があり、ここからワタスゲの保護区への歩道が続いていた。ススキが日光に揺れている。モトは先に走って行ってしまったが、あいあい岬の駐車場でも景色を一望。遠くに三ツ石岬が見える。そのあたりは地図を見ても海岸沿いに道路がないのだが、確かに波に削られた断崖絶壁の岩肌が目立っていた。
トンネルを二つ抜け、中木の集落入口までゆっくり坂を下っていくと、そのままなだらかな上り坂に突入。これが。
最初は重いギアで無理に走っていたのが力尽き、モトのMTX220のサドルを片手で押しながら、軽くしたギアでもう片手で舵を取って上っていくのだが。10分、20分。まだまだ上り坂が続く。
「どさん子ラーメン」の看板があるアロエ加工品工場を過ぎる。道ばたにもアロエ。ちょっと驚いた。松崎まであと22キロの標識。ここまで27キロだから、まだ半分近くある。結局2キロぐらい上り坂が続いて、ようやく峠のトンネル。ふえー。
入間の山村を抜け、差田の交差点を左折。案内標識は直進が下田なので、「ひょっとして戻っているんじゃない?」とモトに言われるが、こっちからでも下田に行けるのだ、と曖昧な返事をする。
グラウンドからさっきに比べればたいしたことのない小さな掘割の峠を越え、二条川沿いに出た。「吉祥」のバス停がある。さっき追い越していったバスは、確かこの吉祥行きだった。
川沿いにまたもや峠に向けて高度を上げていく。ときどき足を休めて、麦茶を飲んで一休み。このあたりは新潟の山村のような感じだ。村も、山を登る坂道も。
立岩の道ばたでおばあちゃんにどっから来た、と声をかけられる。こういう時、「下田から来た」と言うのか、「東京から」と答えるのか難しい。前者だと下田に住んでいるみたいだし、後者だと説明が厄介だ。私ひとりの時は「きょうは下田から」とか言うのだけれど、モトはいちいち悩んでいる。ともあれ、この坂道はどこまで続くのか。「もう見えるだけだから、すぐだよ」。まあその通り、次第に谷が狭まって、妻良トンネルが見えてきた。その入口、吉田口の空き地にどっかり腰を下ろして、おにぎりを頬張る。
トンネルを過ぎると、夕日に赤く染まった山が目の前に見えてきた。峠を下る急な坂道。ヘアピンカーブ。センターラインから飛び出さないようにスピードを殺して走る。モトにも絶対に追い抜くなよ、と伝えて、前には出さない。決して逆にはたどりたくない道だ。
妻良港が一望に見渡せる休憩所で、この先どうしようかと考えた。
さっきの上り坂で思ったより時間を取られ、石廊崎から2時間、差田から1時間がかかっている。既に16時近くだ。港の向こうには子浦の集落。モトはこういう時に限って視力が良い。その集落の上を斜めに上っていく道路を見つけ、あれを上るの?もう無理!と宣言してしまった。
まあいい時間だ。きょうは子浦でおしまいにしようと決めた。
妻良の町中を通り過ぎる。日がほとんど落ちかけていて、寒い。西風をまともに受けるようだ。港では子供たちが裸足で遊んでいる。元気だ。
町外れのトンネルをくぐると、さっきの町中が嘘のように荒涼とした光景になった。強い風にあおられながら、もうあとちょっとだから、と上り坂を無理に上がらず、押して歩く。
子浦の集落入口。さっきモトが見つけた坂道は、見事にここから始まって、集落の上方に続いているのが見える。妻良と違って訪れた記憶がないのは、国道が集落を迂回しているからのようだ。
少し坂道を下り、人気のない一方通行の道をたどる。海に注ぐ小川の手前を曲がると、「東海バスのりば」と書かれた雑貨屋の前に出た。店の角にバス停があった。
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