Promised Garden
朝野玉美さんの労作、『約束の庭(ノルブリンカ) 中国侵略下のチベット50年』が先月末、刊行された。ダライ・ラマ14世の来日に合わせ、最後はぎりぎりの作業になったそうだが、中身は充実したものになっている。
原著は、チベット亡命政府の情報・国際関係省(DIIR)が2001年に出した "Tibet Under Communist China: 50 years"。邦題のとおり、1949年に中華人民共和国が成立、チベットへの侵攻を開始してからのチベット本土の変化を事細かにまとめたもので、欧米はもちろん、中国国内で出された資料などもふんだんに引用して、チベットで何か起きているのか、その責任が誰にあるのか、反論を許さない内容になっている。
朝野さんは自身の長いチベット支援の経験から、こうした正しい知識理解が不可欠と信じて刊行にこぎつけたそうだ。だから、本書は研究者だけでなく、チベットに興味を持つ大勢の人たちに読んでほしい。
冒頭の3章こそ、1959年のダライ・ラマ14世亡命に至る経緯から、その後の社会の激変と悪夢の時代と、歴史を追っているものの、本書の特徴はそれだけではない。第4章からは宗教、教育、人口、資源、軍備と様々な切り口から中国政府がチベットで何を行っているのかを描き出し、1978年以降のチベット亡命政府と中国共産党統一戦線との対話の経緯を挟んで、最後の2章は「西部大開発」とその目的とが列挙している。
原著刊行後に開通した青蔵鉄路についても、訳者の南野善三郎さんはじめ、日本語版の刊行に関わったスタッフはきちんとフォローしている。
一読するだけでなく、さまざまなリファレンスとしても重宝しそうだ。
亡命政府の資料というと亡命者の証言や欧米の研究者の資料に偏りがちな先入観があったが、本書は中国側の資料についても精緻に取り上げており、目からウロコが落ちる思い。
「1998年、江沢民はダライ・ラマ14世は10年以内に他界すると予想した。そのため、北京にとっては問題を先送りすることが『チベット問題を解決する』最も無難な戦略だと見なされている。」(9章「対話」)
感情をほとんどまじえないこうした分析には、思わず背筋が冷たくなる。
『約束の庭(ノルブリンカ) 中国侵略下のチベット50年』 中央チベット行政府(チベット亡命政府 情報・国際関係省)・著 ダライ・ラマ法王日本代表部事務所・編 南野善三郎・訳 発行:風彩社(1600円)
- Category(s):
- チベットに自由を
- The URL to Trackback this entry is:
- http://www.mobileplace.org/dias/blog/promised-garden/tbping