The Struggle For Asia's Water Begins
今年 "WATER: The Epic Struggle for Wealth, Power, and Civilization" を出した雑誌ジャーナリストのスティーブン・ソロモンが、Forbesの「2020年予測」というコーナーに「アジア水戦争の始まり」を寄稿している。 全体として抽象的な論調で、決して共感できない部分もあるが、アジアから遠く離れた欧米の知識人がヒマラヤの水問題をどのように訴求すればいいと考えているのかがわかって興味深い。
ヒマラヤ山脈の北側、標高3300メートルに広がるチベット高原の湖沼や永久凍土の草原は、2020年にはありえないほどの危険地帯になると見られる。しかし僧侶や遊牧民たちが暮らす途方もない広さの平原は、競争が激化する「水」資源にとってかけがえのない大地でもある。
「アジアの貯水タンク」にチベット高原はよく喩えられる。長江、黄河、メコン、サルウィン、ブラマプトラ、インダス、サトラジ、その他の数えきれないほどの河川はどれもチベットの山々の雪や氷河に端を発している。15億人以上がそれらの水に頼っているのである。その役割は増すばかりだ。パキスタンやインド、中国からカンボジアなど人口の大きな国々では水不足が深刻な脅威になりうる。チベットを政治的に支配する中国が、「貯水タンク」の管理人に君臨しており、水の流れを一方的に変えようと情熱を燃やしている。
二酸化炭素を大量に排出する石炭によって経済大国に上り詰めた中国は、その勢いを止めないために、水力の活用を野心的に進めようとしている。国家的な目標は現在発電量の1/3程度を水力でまかなっているのを、2020年には60%に引き上げることだ。そしてそのために最適な立地条件は、すべてチベット高原にある。
三峡ダム上流の長江には巨大ダム計画が目白押しだ。インドシナ半島の漁業、農業に欠かせないメコン上流と、インド東部とバングラデシュを潤すブラマプトラ川上流にも小規模ダムが作られている。ミャンマーの生命線であるサルウィン川にも中国は目を付けている。
中国が電力をまかなうためにダムを建設する影響は、河川下流の年間を通した水量の増減や水質、環境、はたまた「食の安全保障」やエネルギー戦略、政治的安定にも及ぶだろう。この50年間で最悪の渇水に見舞われたメコン流域の国々は今年初め、メコン上流域にダムを建設しようとしている中国を非難した。2015年に至って、伝統的に秘密主義の中国に対抗して下流の国々が自前でダムを持つようになれば緊張は高まるだろう。
インドはブラマプトラ川に中国が建設しようとしているとされる巨大発電ダムから目を離せないでいる。中国は一笑に付すが、その背景には中国全土で深刻化する水不足を補うために計画されている「南水北調」つまりブラマプトラ川の水を分水しようとする巨大プロジェクトが控えているからだ。中国のひとりあたりの飲料水は米国の1/5しかなく、北部の渇いた大地では特に水に不自由している。今後10年の間に、インドとのあいだで国境紛争が未解決になっているチベット南部のブラマプトラ川大屈曲部に世界最大級のダムを中国は作るだろう。老齢のダライ・ラマの没後、国際的なチベット支援の流れが衰えることで、地政学的なバランスも中国にとっては有利に働くと見られる。
一方、地域的な電力供給やモンスーン時期の治水のために安価で改良可能な小規模ダムを国際協力で作ろうという動きもある。中国は「協力的」だと見られたがっているのだ。これは一見正しい動きのようにも見えるが、あまりにも間接的で性急すぎないだろうか?チベット高原には不吉な気候変動の雲が覆い被さろうとしている。激しいモンスーンや氷河の縮退は、いかに私たちが地球温暖化に対するこれらの河川の影響を知らないか警告しているかのように見える。もし「貯水タンク」が空になることがわかれば、すべての人々が困ったことになるだろう。
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